1.グリースとは
グリースは、基油(ベースオイル)と増ちょう剤と添加剤で作られています。
グリースの特徴は、機械が動く前の静止状態では半固体状、稼動状態では液状となり潤滑の役目を果たします。機械が静止すると、また半固体状に戻ります。
簡単に言うと、家庭の台所で食器を洗うときのスポンジと洗剤の関係に良く似ています。
食器を洗う際に水と洗剤の付いたスポンジに力を加えると、中から泡になった洗剤が出てきて食器に付いた汚れをきれいに取ってくれます。
グリース潤滑もそれと同じように、力を加えられると網目構造を形成する増ちょう剤がスポンジの役割となり、中に入っているベースオイル(グリース中の80~90%質量)と添加剤が出てきて、摩擦部分を軽やかに潤滑します。
もちろん機械が稼動を停止するとまた静止状態の半固体状に戻ります。
2.増稠剤の特性
3.NLGI 混和ちょう度番号
混和ちょう度とは、グリースの硬さを表す数値です。
この数値は規定の測定器で算出されたもので値が大きい方が軟らかいグリースです。
NLGI とは、National Lubricating Grease Institute(米国潤滑グリース協会)の定めたちょう度番号による区分で、数値が大きくなるにつれ、硬いグリースとなります。
4.基油粘度
基油動粘度(mm2/s40℃)は、数値が大きいほど粘りがある。動粘度は温度によって変化するため、国際的基準になっている温度(40℃)において測定します。
数値の小さいグリースは高速回転用に使用し、数値の大きいグリースが低速回転用に使用します。
5.潤滑油の粘度
粘度は潤滑油の性状の中で最も大切なもので簡単に言えば「油の粘っこさを表す尺度」です。
冷却作用、エンジンの始動性、油圧作動における圧力の伝達には低粘度の方が良く、磨耗や吹き抜け防止、密封作用には高粘度の方が良い傾向にあります。
※粘度とちょう度の違い:粘度とは、流体(オイル)の粘りの度合いを表す単位です。
ちょう度(稠度)とは、ペースト(グリース)状の硬さ・柔らかさを表す単位です。
6.合成潤滑剤について
合成潤滑油は,鉱油と対比された言葉であり、化学合成された潤滑油をすべて含んでいます。
各合成潤滑油の特性で、それぞれの潤滑油の分子構造によって特長が左右され、合成潤滑油は鉱油では得られない特性を化学合成によってカバーするものであり、その特性や用途によって合成油を使い分ける必要があります。現在の主流,PAO(ポリ‐α‐オレフィン)やエステル油、アルキルジフェニルエーテル油であり,高温下において長寿命を必要とする装置に多く使用されています。
7.フッ素系潤滑剤の特徴
①フッ素系潤滑剤は、化学的に非常に安定な物質で酸化劣化をほとんどおこしません。
②蒸気圧が非常に低いので真空下やクリーンルーム等で使用するのに最適です。
③増ちょう剤として用いているPTFEは、固体潤滑剤としても使用され優れた摩擦・磨耗特性をもっています。
④半導体プロセス装置や真空機器・原子力関連・高温用軸受けやチェーンの潤滑に使用されています。
8.フッ素系潤滑剤の取り扱いの注意点
フッ素系潤滑剤は他の油剤類との相溶性が全くありません。
したがって装置に充填や塗布する際には、これまで使用してきた油剤類を完全に除去する必要があります。フッ素系潤滑剤は、熱分解によって有害なガスを発生する恐れがあり、高温(300℃以上)にさらされる可能性がある場合には、換気を十分行う必要があります。
また、これを指につけたままタバコを吸うことも厳禁です。
9.潤滑剤とシール・パッキンとの相性
潤滑剤には、ゴムパッキンを膨潤させたりする商品があり、選定の際には注意が必要です。
※当社では、オメガ潤滑剤・ジータルブ潤滑剤との相性リストなども作成しており選定の際にはご連絡頂ければアドバイスいたします。
10.グリースの混和安定性
種類の違うグリースは基本的には混ぜてはいけません。
○:一般的に両方の性質に応じた変化をする
△:かけはなれた変化をする事もある
×:著しくかけ離れた変化をする
四球極圧テスト方法
潤滑剤の焼付き防止性の目安となる数値です。値が大きくなるにつれて焼付き防止性が高い潤滑剤となります。
各試験とも原理はほぼ同じです。
試験用鋼球を試料容器及び縦軸に固定。試料容器に潤滑剤を満たし、縦軸を回転せずに静止のままで試験油圧を負荷。
各試験の規定の回転数で回転させ、規定時間内における焼付きの有無を調べます。